行政書士になろうとする目的やきっかけというのは、人それぞれだと思います。
『士業になりたかったから』『会社員でコキ使われるのが嫌』『満員電車はもううんざり』『漫画やドラマを見て』などなど。
ちなみに私が行政書士になったのは、もう満員電車で通勤するのが嫌になったから、という超単純な理由です。
職場環境や給与などに不満はありませんでしたが、これがあと何十年も続くのかと考えたら、もう嫌になっちゃったんですね。
会社組織での出世意欲もありませんでしたし。
行政書士の仕事なんて最初は何も知りませんでしたが、とにかく現状を変えたい、もっと好きな仕事がしたいという思いだけでした。
まあきっかけなんてそんなもんです。
ただ行政書士を目指すきっかけは何でもいいのですが、行政書士として本気で開業するのであれば、やはり目的意識や将来のビジョンは明確にしておくことが大事だと思うのです。
そうした目的意識、ビジョンがないままに開業してしまうと、結果として自分が望む現実とは真逆の方向に進んでいってしまうかもしれません。
なぜ行政書士が将来のビジョンを考える必要があるのか
行政書士で開業すること自体は登録申請して登録料を払い、事務所(自宅でも大丈夫)と必要最低限の備品を揃えておけば、とりあえず問題ありません。
行政書士という商売は仕入も在庫もいらないですし、ある程度の自己資金があれば必ずしも借入をすることなく開業できてしまいます。
そういう意味では、開業前に抱いていたきっかけを達成することは簡単なことです。
ただ独立開業するからには、中長期的な目的意識や明確なビジョンが伴わないと、経営者として事務所を息長く運営していくのは難しいかもしれません。
思い描いていたビジョンの達成までは厳しい日々でした
私自身は、開業前に『自分が好きなことをやれる時間の確保』と『最低でも年収1,000万円』という将来のビジョンを一応掲げて開業しました。
かなりざっくりとした目標です。
これがビジョンと言えるのかどうかは分かりませんが、とにかく開業から目標を達成すべく活動を開始しました。
カネなしコネなし、経営もロクに勉強することなく勢いで開業してしまいましたが、収入については幸い開業後2年ほどで何とか達成はできました。
他の有能な方に比べたらかなり遅いので恥ずかしいですけどね。
しかし達成の代償は大きかった~ビジョンを達成する仕組みを再考
ただしその代わりに開業当初から数年はプライベートな時間をつくるどころか、仕事はもちろん事務所運営であったり営業活動などで、とにかく死ぬほど忙しい日々を続けていました。
結果、代償として過労とストレスで入院も経験しましたね。
あの当時は本当に辛かったです。
開業当初の行政書士というのは、とにかくあらゆる手段で集客して仕事をとり、24時間365日働くぐらいの意気込みをもって臨まなければなりません。
自己研鑽と実務経験を積み、集客してとにかく仕事をしまくるということですね。
集客の手を緩めることなく死ぬほど忙しいということを経験しないと、その先を見据えたイメージを現実的に考えることが難しいからです。
そうした忙しさを経験し、自分が開業当初に思い描いていたビジョンを達成するにはどのような仕組みをつくればいいのか、といったことに知恵と工夫を張り巡らせることが重要なのです。
私はひ弱なので入院という情けない憂き目に遭ってしまいました。
しかし退院後、もうひとつの目標である『自分が好きなことがやれる時間の確保』というビジョンを達成させるべく、早速実現に向けて動き始めました。
徹底した業務の効率化とアウトソーシング化を目指した
入院中にずっと考えていたのは、まず業務の効率化とアウトソーソング化です。
行政書士の仕事というのは労働集約型のビジネスです。
入ってきた仕事をまともに一人でこなしていたら、必死になって働かないとお金になりません。
つまり受注を伸ばしてもせいぜい経費を削減するくらいでしか利益につながっていかないのです。
一人で稼ぎ出すことができる利益には、どうしても限界があります。
ですから集客の手は緩めずに、とにかく仕事をとりつつも優良な外注先の確保を推し進めていきました。そうした仕組みが今は何とかうまく回っています。
一人での仕事に限界を感じれば、やはり他力を使うしかありませんからね。
集客とクロージングまでのノウハウは死ぬほど忙しかった経験で会得
集客に関してはどうやったら見込み客が集まるのか、成約までこぎ着けることができるのかといったノウハウを、死ぬほど忙しかった時期に十分蓄積して会得していました。
ですから集客からクロージングまでのスキルには自信がありましたし、実際に今でも結果を出すことができています。
そしてやっと自分の好きなこと、仕事に専念できる環境づくりができつつあります。
こうして新人行政書士さんのためにコンテンツを書く時間もできましたしね。
ただどうしてもこの仕事は私にやってもらいたいという顧客も中にはいらっしゃるので、それが今のちょっとした悩みの種です。とてもありがたいことではあるのですけど。
やろうと思えば今よりもっと集客して仕事をとることはできます。何しろ死ぬほど働いて入院までして必死でノウハウを得てきましたので。
ただ今は様々な仕組みを構築できているので、仕事量を調整して自分のやりたいこと、やりたい仕事にとりあえず専念できています。
程よく仕事をこなしているといったところでしょうかね。
もちろんそれでも一人で必死に死ぬほど働いていたときより確実に利益は出しています。
将来のビジョンというのは人それぞれです
行政書士はデスクワークの専門職だと思われがちですが、多分に肉体労働的な側面もあります。
ですから生涯現役で仕事ができるとは思っていません。
ある年齢に達したらセミリタイア、あるいは事務所経営をリタイアしなければならない時が必ずやってきます。
たとえ自分が生涯現役でやれる気力があったとしても、年齢が80代、90代ともなると顧客側としてはやっぱり不安でしょう。
ですから今すぐという考えはありませんが、いずれは法人化といった『組織』という仕組みも視野に入れざるを得ないかなとは思っています。
業務の効率的な処理にマンパワーは絶対必要です。経営者として事業を営んでいる以上、雇用という面でもっと地域貢献したいとも考えていますし。
思い描いていたビジョンには程遠い~まだまだ働きます!
今までかなり無理して働いてきたところもあるので、もうセミリタイアしたい気持ちは少しだけあるのですけどね。
ただまだまだ理想とする経営には程遠いところなので、そういうわけにもいきません。吹けば飛びそうな零細事務所ですし。
何よりもっと稼ぎたいですしね。私など本当に稼いでいる行政書士の足元にも及びませんので。
行政書士で開業することを考えたきっかけ、将来のビジョンというのは人それぞれでしょう。
とにかく自分一人の力でバリバリ稼いでいくのも良しですし、自己資金を十分に用意して銀行から融資を引っ張り出し、最初から組織化して大きく儲けていきたいというのもまた良しです。
支部長や単位会の会長、日行連の会長を目指す、なんてことでもいいと思います(私自身はそういった政治的な方はまったく興味ありませんが)。
【最後に一言】行政書士の仕事というのはかなり地味ですよ
開業前から綿密な事業計画などは必要ありませんが、やっぱり起業するからには、ざっくりでもよいので目的、ビジョンをもって経営に挑戦していくことが大事だと思います。
そうしないと開業してからの現実に押しつぶされてしまいます。
おそらく開業前に思い描いていたことと現実の仕事は、相当かけ離れていると感じるはずですので。
特に漫画やドラマなんかの影響を受けて行政書士になった方は、かなりのギャップを感じているでしょう。あんな派手に仕事する行政書士なんて実際私は見たこともありませんし。
本来ドラマ化されるほど派手な仕事じゃないどころか『相当に地味』な仕事です。そもそも行政書士はあくまで『裏方』の仕事ですからね。
これから開業する方はざっくりでもよいので、ぜひ将来的な目標やビジョンをもって経営に挑戦してみてください。これは本当に大事なことだと思います。
ただし死ぬほど忙しくなることも必要な経験ですから、そのあたりは覚悟のうえで。